タンゴに学ぶノン・バーバル・コミュニケーション

あなたは

「ノン・バーバル・コミュニケーション」という言葉を

聞いたことがありますか?

「非言語コミュニケーション」のことを言います。

心理学者のアルバート・メラビアン博士は、話し手が聞き手に与える影響が

どのような要素で形成されるか測定しました。

その結果、話し手の印象を決めるのは、

「言葉以外の非言語的な要素で93%の印象が

決まってしまう」ということがわかりました。

視覚情報 (Visual) – 

    見た目・身だしなみ・しぐさ・表情・視線 …55%

聴覚情報 (Vocal)    

 声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポ …38%

言語情報 (Verbal) – 

 話す言葉そのものの意味 …7%

実は、言語的な部分は1割にも満たない、7%しか相手に伝わらないのです。

このように言語情報以外の情報のほうが会話相手に

多くのことを伝えてしまっているのです。

言語情報以外の情報をノンバーバルコミュニケーションと言います。

私たちはノンバーバルコミュニケーションを通し、93%もの印象を

会話相手に伝えてしまっているのです。

アルゼンチンタンゴでは、男性が女性を誘う際、

視線・表情・仕草 などによって 踊りたい意思を示し、

それを「カベセオ」と呼んでいます。

女性は男性からカベセオによるお誘いを受けたら、

それを受ける意思を示すサインとしての視線や表情

仕草でお返事をするか、お断りしたい時には視線を外したり、

伏せたりすることで表現します。

カベセオが成立し、男性が女性に歩み寄るには、

周りの状況も十分配慮し、フロアの流れを遮ったり

人にぶつからないよう注意を払うことが必要です。

女性は 男性が確実に自分をお誘いしていることを確認出来たら、

慌てず お相手の元へ立ちます。

これら、タンゴにおける一連の動作は 完全な

ノン・バーバル・コミュニケーションです。

さらに、タンゴでは抱擁を意味する「アブラッソ」という組み方をしますので、

身だしなみや匂いへの配慮も欠かせません。

服装などもカベセオが成立するかどうかの重要な要素でもあるからです。

私はレッスンの時から、男性の視線の使い方、

女性をエスコートする腕の使い方など細かく言いますし、

女性には男性に近づく速度やタイミングまでアドバイスします。

ブエノス・アイレスの男性はタンゴを踊る人・踊らない人に関係なく、

スーパーや駅、エレベーターなどで乗り合わせた赤の他人であっても、

ごく自然に女性を先に通します。

目が合えば微笑んで「お先にどうぞ」というカベセオを送ってくれます。

それが とっても紳士的でかっこいいのです。

女性も やけに遠慮し過ぎたりせず、

ごく自然とその好意を受け取っており、

どんな年配の女性であってもレディなのです。

タンゴのステップには、まさにそのように 

男性があたかも女性をエスコートするかのような動きが
たくさんあります。 

足は動かないのに、スッとわずかに胸をひらくことで、

女性だけを1歩させるような動きなどです。

少し悔しいけれど、それは日常のなかで ずっと染み付いた

ジェントルマンとレディの呼吸であり、
なかなか私たち日本人にナチュラルさをもって 

それが出来ない所以かもしれません。

日本では、電車やエレベーターで、女性を押しのけて先を急ぐような

男性をよく見かけます。


女性も同様に 男性を突き飛ばす勢いの方も多くいます。

ラッシュ時に限らず、いつでも誰かと競争をしているかのような動きに

なりがちですが、

私としては、せめてタンゴを習っている人たちは、

よほど急いでいる時でなければ、日常の中でも
ほんのちょっとタンゴ的な「間合い」を取り入れてほしいな と思うのです。


よく「息の合ったコンビ」や「息の合ったペア」などという言い方をしますね。


お笑いコンビやフィギュアスケートのペアなど特別な人に限らず、
本来誰もが、どなたとでも 適切な「呼吸」や「間合い」
とれるようになるはずだと思うのです。 

タンゴの基本は「相手に意識を向けること」にあります。
自分一人だけで勝手に動き出すことなど1つもありません。

今、目の前にいる相手に意識を払えば、
その人との心地よい「呼吸」や「間合い」は生まれます。

 

ちょっとだけ エレベーターに乗り合わせた人へ、
意識を払い「お先にどうぞ」という間合いをつくること。

譲って頂いたことを謙遜し過ぎず受け取ること。
そんな息の合った状態を ただ乗り合わせただけの人とつくれたら、
お互いにその日はちょっといい気分。

タンゴは男性がリードをし、女性がフォローをすることで動きが生まれますが、
これは言葉のない会話です。

 

日常の会話でも、相手の話を最後まで聞かないうちに
同時に話し出したりする方がいますが、タンゴの動きも同様に、
二人で同時に話しているわけではないのです。


「掛け合い」があるのは 適切な呼吸や間合いがあるからこそです。


リードする側が一方的に話しているわけではなく、
二人は対等な関係にあるからこその「掛け合い」です。

タンゴのステップも、二人が速度を整える意識をもつことで、
ぐっと動きが柔らかくなります。

日常の会話でも、相手とのテンポを合わせることで、
ひょっとしたら 心地よい会話のテンポになるのかもしれませんね。

 

ブエノス・アイレスのミロンガで ある老婦人は私に言いました

 

男の人からカベセオでダンスに誘われたら、
まずはにっこり微笑むだけでいいのよ。

そして相手がエスコートをする仕事を取っちゃダメ。
男性がかっこいいジェントルマンでいるには、
女性が堂々と受け取ってあげるからこそなのよ、
と。

 

ミロンガにおける 周りから敬意を払われる素敵なジェントルマンのことを
「ミロンゲーロ」と言います。

彼らはカベセオが成立した女性には、ちょっとネクタイを直す仕草を
したりしながら、女性を迎えに来ます。

ミロンゲーロは彼女とのダンスを終えても、
少し女性の背中に手をそえて席までエスコートします。


場合によってはここまで一言も言葉を交わすことはないことも。
それが 本当にかっこいい。

なかなか急には難しいかもしれませんが、
せっかくタンゴを始めたのですから、この究極の
ノン・バーバル・コミュニケーションを意識してみてください。

日常の中での対人関係も何か変化してくるかもしれませんし・・・

なにより、こんな 粋でかっこいい

 レディ・ジェントルマンになれたら素敵ですね。

 

 

 

 

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